運送契約としての用船

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用船(傭船)契約などの意味を調べると、
「荷主や運航業者が船主とかわす運航形態(契約)」や、「大きく分けて、裸用船、定期用船、航海用船の3つがある」などと書かれていたりするからよくわからなくなる。
用船は船を借りるという広義である。誰が誰に?という観点で考えるとわかりやすい。基本的な用船は、大きく分けて
1.荷主と運航者間で行うもの
2. 船主と運航者間で行うもの
の2つの形態になる。運航者は船主から用船した時点で、荷主からは船舶所有者(船主)とみなされるが、紛らわしいので、ここでは単に運航者とする。


荷主と運航者がとりかわす運送契約としての用船には、
売荷主または買荷主と運航者(船社)が取り交わす海上運送契約には個品運送契約と航海用船契約であるが、ここで「用船」と名乗るものがあるので混乱してしまう。しかし、航海用船契約も、要は運送契約である。

・チャーターパーティーB/L(傭船契約船荷証券)によって契約される。
運送人によって船荷証券が発行され、チャーターパーティーは、その裏面に契約内容となって摂取されていることが多い。CP B/Lには船名、貨物の種類・数量の他、運賃、荷役費の負担サイド、滞船料、早出料、Lay-day(time)許容停泊期間、好天荷役日(WWD: Weather Working Day)、日曜祭日をLay-dayから外す条項SHEX(Sunday & Holiday Excepted or Included)などが記載される。
・用船料=運賃 と解釈してよい。容積1M3(/ 1.133)または重量1tあたりいくらという計算(Freight ton)で、船会社に有利な方が採用される。
・船内荷役費は荷主負担(FI & FO)となることが多い。
荷主に船舶・航海の用、及び、船長への指揮命令権等は一切発生しない。但し、貨物に関する吊り仕様や固縛方法、またはその計算根拠等の提出を船社に求めることはできる。逆に荷主は梱包が運送上の安全性と耐久性を有するものであることを船社に約定しなければならない。

個品運送契約 (Affreightment in a general ship)
一隻の船に多数の荷主の少量貨物を集積する。雑貨などがこれにあたり、主に定期船で用いられる。

航海用船契約 (Voyage Charter)

穀類、石炭、鉱石、鋼材等の大口貨物ではこういった運送(用船)契約が結ばれる。荷主が運航者から船舶の全部または一部を借切って船積みし荷物を輸送する契約。荷揃いや市況によって運航日程や航路が未定である不定期船に多い。


こぼれ話:荷主は偉い!の勘違い。
荷主は偉いものだ。荷主の言うことは絶対だ。と勘違いした荷主がよく間違うのがここだ。乗組員が挨拶しなかったことに端を発して、粗探しをするモンスター。
本船の荷役を見学に来るのはよいが、船員がヘルメット被っていなかっただの、フォクスルでタバコを吸っていただのと船社にケチ(クレームと言えない)をつけてくることがある。いかなる場合も荷主に船舶または船長への指揮命令権は一切発生しないので、本来これは越権行為で独占禁止法の優位的立場の濫用に当たる。ただ、実態として見栄えは悪い(安全上問題がなかった場合であっても)し、船社側は荷主様々なので、内心では無知を笑いながらも遜って威張らせてはくれる。

荷主が船にクレームをつけられるのは、荷物に関わるもの(取り扱い及び損傷、滅失)だけです。船倉内でタバコを吸っていたならこれは貨物の取り扱い上非常にまずい、船社には大いにクレームするべきだ。ただ、船倉でヘルメットを被っていなかったとしても頭突きで貨物が破損した石頭は未だ存在しない。船員の安全に関し口出しはできない。

船に対する指揮命令権がないことを知っている狡猾な荷主になると、さらに質が悪い。「基本的なことをできない船員が乗っている会社に大切な荷物を預けられない」などと正論でくる。船員に偏見を持つ傲慢な態度がプンプン臭う。
陸上で考えて欲しい。だいたい他人の家や会社にやって来て、ここがどうだ、あそこが悪いなどという人間がどこにいるだろう? 船員には言ってよいなどその人間性を疑われる。また陸上(東京)の常識を船に持ち込む事は無難なことでない。

畏敬の念を持てとは言わないが、船員も一生懸命働いている。人間だからヘルメットを脱いで汗を拭くこともあれば、作業がひと段落し煙草をくゆらすときもある。
現在は荷物に対し船が供給過剰で船会社の立場は弱い。今後もこれが逆転することはないだろう。しかし、需要供給バランスとは別に、大切な荷物ならこそ荷主が、運んでもらっているという謙虚な気持ちを持ってもらうなら、それこそが相互に円満をもたらし、かつ安全にも通じると、私は信じる。


ただねえ、ちょっと付け加えるさせて頂くなら、
船員の方にも考えねばならない余地はある。大手外航船社や油船ではまず考えられないだろうが、内航等で喫煙者の船長が乗船する船では何処でも彼処でも喫煙許可している場合があって、メス(食堂)だろうが、荷役事務所だろうが、ブリッジだろうが、どこでもプカプカと煙を燻らせて平気だ。嫌煙者に全く配慮を欠く。
今どき、世間知らずというか・・・まあ、バカ船長も少なからずいるということです。こんなんで、なにがISMかと、言いたくなる。こういうところで上記のよう荷主にケツ捲られているのがわからいのかなあ
、と私は思う。

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